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脳内ニューヨークのKSのレビュー・感想・評価

脳内ニューヨーク(2008年製作の映画)
4.5
死をテーマに、ある男の孤独を描いた映画。

著名な劇作家である主人公は、徐々に体の自由が効かなくなり涙や唾などを薬品で頼るようになっていく。それは演劇的な行為であり、自分の人生が演劇の一部となっていく。


演劇的な行為が自分の一部なのか、自分の一部が演劇的な行為なのか、その境目が分からなくなっていく。

本作には複数の女性が登場するが、その女性たちは性的な部分があからさまに強調されている。それは女性における演劇や映画といったエンターテインメントの中にある男性が作り上げたアイコン(偶像)としての女性像を表しているのだろうか。しかし、物語が進むに連れて、立場や役や性別と言った役割がミックスされていく。

自分を規定しているモノは何だろうか。相手を見ているつもりでも、それは自分の認識であり、自分以外の何者でもない。演出の声が入る事で、上演された舞台なのか、彼の実人生なのか、それとも両方なのか。全ては自分の中の出来事なのかもしれない。そして、どんな人も、ちっぽけな自分として死を迎えるのだろう。そういう意味では誰もが悲劇を生きているのかもしれない。でも、最後に歌がある事で、それでもいいのかなと、全てが美しい物語に変換される。不思議な作品。

12年ぶり2回目の鑑賞。
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