【詳述は、『かぐや姫』欄で】本多=円谷初タッグの、変な色気なしの、何という表現や姿勢の誠実さ·緻密さ。善人が多いが、裏に秘められたダークさと距離感もキッチリ。ケレンは少ないが見事。『夢』のスタッフの知人が言ってたが、スコセッシは黒澤よりも本多に逢えた事に、明らかに興奮してたらしい(冷静に考えれば黒澤とは、既にその数年前、ホテルに押しかけて持論を捲し立てて、知己か)。

面白い。本作品で初めて本多と円谷がタッグを組んだ作品として目がいくのは仕方ないがそれを抜きにしても冒頭の芥川也寸志の迫力ある楽曲からはじまりラストの円谷英二による自然災害（土砂崩れの特撮）によって、恋愛の勝ち負けと人生の勝敗を終結に持ってくる物語構成の巧さは傑作に値するエポックメイキング！
「自分の体温」で何年もの前から土地を育んできた村の人々の気持ちを理解しながらも病に倒れた親友（春日俊二）の愛の矛先の相手（ヒロイン藤田泰子）と好いてくれるお花積みガール利根はる恵の想いを胸に主人公伊豆肇は「研究と恋愛の平行線」をゆく。釜足の酔いどれ音頭をまたしても観れるのも嬉しい。先月ラピュタでニュープリお披露目助監督の筧正典デビュー作「泉へのみち」も再評価に繋がって欲しい。

• #mingo2022

本多は『伊勢志摩』で修得したドキュメンタリー・タッチを本作導入部の火山地帯の描写に活かしている。研究所の研究員が、樹木伐採で山崩れが起きることを村人に警告するが、ブローカーの妨害で伐採が続く。そして豪雨。まるでニュースフィルムのアーカイブのような迫力。手抜きや逃げがないのだ。そして、ヒロイン藤田泰子と伊豆、春日の三角関係を対立ではなく、お互いが見守るという優しさに、本多猪四郎の人柄が反映されている。悪人小杉義男と善人藤原釜足の対比も巧い。