櫻イミト

青い目のロバ/マグダナのロバの櫻イミトのレビュー・感想・評価

4.0
カンヌ映画祭短篇映画賞受賞。同グランプリ受賞作「懺悔」(1984)のテンギズ・アブラゼ監督の劇映画第一作(共同監督)。グルジア・ソ連制作の児童劇。

1895年グルジア(ジョージア)。未亡人マグダナは子供3人の母であり貧しいヨーグルト売りだった。子供たちはある日、病気になり捨てられた小さなロバを見つけ保護する。力を合わせて介抱したところ少しずつ元気を取り戻したので、ルルジャと名付け新しい家族にした。ルルジャは重いヨーグルトを運び母の力になった。ところが、それを見た元の飼い主が。。。

とても面白かった。ジョージアの起伏にとんだ素晴らしい景観の中、イタリア・ネオリアリズモ的なタッチで映画が展開する。子供たちへの慈しみが伝わるカメラはキアロスタミ監督などのイラン映画を連想させ、物語の着地点は共産イデオロギーを感じさせる。多民族の国ジョージアならではの多様な文化の集積と、そこから紡ぎ出された豊かな個性が、児童劇である本作に重厚さと普遍性をもたらしているのだと思う。

特に映像に魅かれるものがあった。ロケーションも生活様式も他にはないもので、それを切り取る大胆なロングショットも効果的だった。一方で、家族たちの表情はしっかりとアップで捉えられ、対する母も子供たちも芝居に臭みが無くとても好感が持てた。叶わないことだがロバの青い眼はカラーで観てみたかった。

可愛そうな話ではあるが、最後に見せる母の眼は再び前を向いている。集まってきてくれた村の人々の気持ちが彼女を支えたのだ。イデオロギーのこの側面は、決して捨てたものではないと個人的には思っている。

※原作の結末から改変されていたことで制作後に公開中止になった
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