このレビューはネタバレを含みます
灼熱のバンコクでかりそめの関係として始まった恋が徐々に人生をかけて貫く愛へと発展していく様子を描いた前半は異国情緒とともに美しく描いていて、とても印象的でした。ちょっとセピアっぽい色調は、二人のその後の生涯において、とても大切な出来事として残るんだろうなという予感を持たせている気がしました。
ただ、この作品おいては、豊に婚約者がありながら、どんどんと深みにはまっていく豊と沓子の関係を”二人の生涯の恋として暖かく見守りたくなる”要素に欠けている気がして、あまり、物語に入っていけなかった。ゆえに、終盤に二人が思い出の地バンコクで再会しても、少々冷めた目で見てしまう。
むしろ、登場シーンは限られているものの、豊には黙って、一人バンコクを訪れ、婚約者として、沓子に対峙する光子の凛とした姿のほうが印象に残った。
