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4人の食卓のmndisのネタバレレビュー・内容・結末

4人の食卓(2003年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

初めて聞く監督だけど、とても面白い。
ここまで面白いのに3作しか撮ってないのは何故だ。。(後から知ったが女性監督のようだ。韓国で女性監督ってあまり聞かないから新鮮だ)

映像がまず素晴らしい。
作品全体のテーマになっている事もあり、ほとんどのカットでの「光」の差し方が素晴らしい。

固定で撮られた映像も決まっている反面、たまに入ってくる手持ち風の映像の奇妙さが際立って良い。


ストーリーは複雑である上に、決定的な部分の描写は排除したり曖昧にして、多面的な見え方にしてるので説明しないが、黒澤明「羅生門」西川美和「ゆれる」デヴィッドフィンチャー「セブン」黒沢清「cure」を連想させる内容や映像。


太陽は真実の光であり、照明は嘘の光。
そういう設定で映画を作られていると思う

嘘の光の下に架空の家族が現れたり、真実を語らせる時に照明を消させたり(キリスト教の懺悔部屋のモチーフも入っていそう)

(イチャンドンの「シークレットサンシャイン」も宗教と光が大きな要素となっていて、太陽の光が差すところに神がいるという内容だったと記憶しているが、そことの共通点なども面白い。そもそもそういう教えなのかな。。)

「太陽光=真実」と同じく大きなテーマなのが「家族」なんだろうと思う。
主人公のインテリアデザイナーのジョンウォンは結婚を控えているが、その結婚は彼が心から望んでいるのか個人的に疑問を感じる、義理の父親が運営している教会への支援を婚約者の親が行うなど、ハッキリとした描写はないが、そういう策略的な結婚への不安や自身への偽りの心と彼の幼心に持った家族へのトラウマと相まって、「家族」を持つ事の不安や恐怖を彼自身に与えて苦しめているのだと思う。

そのトラウマを嘘だと思い(義理の父親との会話で自身へ思い込ませる。※ここの描写はカットされてる)込ませて、もう1人の主人公である人妻チョン・ヨンに電話するシーンは映画の大きな分岐点であった。

彼と彼女は同じく家族というものにトラウマを抱える仲間であったはずだが、主人公のジョンウォンは、自分のトラウマは勘違いであり、あなたと私は同じ仲間ではないと断絶し、自宅にあった偽りの照明を破壊し婚約者へ電話をしラブコールを送る。
しかし、そこに返事をしてきたのは婚約者ではなくチョンヨンであり、彼女は裏切られた事への復讐や自身を証明する為に行動を起こす。

その結果、ジョンウォンは太陽の光が届かない部屋の奥で、偽りの照明に照らされながら擬似家族を持つという、皮肉が過ぎる内容で終わる。

曖昧で多面的な部分が多い映画だけに、頭が混乱するが、刺激的で面白い映画だと思う、というか名作レベルだと思う。

何度か見ないと分からない所や語りがいのある所が多いのも興味深い映画。
主人公が照明の配線を探そうとして、屋根裏からゴミが落ちてきて怪我をするシーンは、偽りの光を作る中で、見たくもないものが屋根裏から落ちてきたとも思えるし

ロケーションで選ばれた団地はまさに家族の集合体であり、映画の家族というキーワードと合致するし、結婚というものへの強迫観念も映画全体に薄ら感じる。

マイナス面があるとしたら、家族という大きなテーマの中でそれぞれの登場人物の家族の要素を盛り込みすぎな所。特に主人公の男のジョンウォンのトラウマ要素が多すぎる。。
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