Eike

狼男アメリカンのEikeのレビュー・感想・評価

狼男アメリカン(1981年製作の映画)
4.0
1981年の作品ですからもう40年以上も昔の作品と言うことになります。
本国アメリカでは完全にクラシック作品扱いですが一言で言うならとてもユニークな作品。
監督ジョン・ランディスはと言えばこの当時「アニマルハウス」と「ブルースブラザーズ」を立て続けに大ヒットさせており、正に絶好調であった訳で勢いに乗っていたことが良く分かります。

本作のユニークさはホラー映画でありながらもユーモアの生かし方の巧妙さと、そのバランスのとり方にあると思います。
それでいて、ラストはちゃんとホラー、それもクラシックな狼男ジャンルの作品らしい悲劇に落着くあたりが不思議に自然で納得できるものになっております。
全体的なトーンについては観る側の受け取り方次第でしょうがコメディではなくあくまで「ホラー」であるのが今でもクラシック作として評価される理由でしょう。
同じくコメディとホラーを両立させた名作である「ゴーストバスターズ」の方はあくまでコメディが主体であるのとは対照的と言えるのかもしれません。

それにしても1時間38分の作品で現在の基準から言えば間違いなく「小品」なのでしょうが、構成の巧さもあって非常に締まった感触で最近のアメリカ映画には見習って欲しいものであります。
2人のアメリカ人がヨークシャーの荒地をトレッキング中に「野犬」に襲われるオープニングからロンドン、ピカデリーサーカスの薄暗い露地裏で幕を閉じるエンディングまで正に流れるように物語が展開していくのが実に心地よい。
これはメジャースタジオの作品にしては珍しく物語の時系列通りに撮影が行われた事も寄与している気がします。

製作側はダン・エイクロイドとジョン・ベルーシを起用して「コメディ」にしたかったそうなのですがジョン・ランディスはそれを許さなかった訳です。
ランディス監督にとって本作はあくまで「ホラー」であったということですね。
事実、流血シーンやゴア描写に関しては現代の観点からしても決して見劣りするものではなく、その完成度は極めて高く本作は当然のようにR指定なのだ。
しかし、それでもレーティング対策としてランディス監督はホームレスの男性たちの惨殺シーンとラブシーンの一部を止む無くカットせざるを得なかったそうで今でも残念に思っておられるそうです。

本作に関してははやはりリック・ベイカーによる「特殊メイク」の貢献度についても言及せざるを得ないでしょう。
本作は1981年に初めて創設されたアカデミー賞の「最優秀メイクアップ」賞の初代受賞作であります。
このカテゴリが新設された経緯として本作の前年、1980年に公開されたD・リンチ監督の「エレファントマン」の存在があります。
このアカデミー賞に輝いた名作において主人公ジョン・メリックを演じたジョン・ハートは役の設定上、すさまじいメイクを施して演技に臨んだ訳で、その特殊メイクの演技への貢献度を評価する必要があるとの機運が高まった事が大きな要因であった訳です。

そして特殊メイクの力を世間に見せつけた本作にドはまりしたのが故マイケル・ジャクソンであり、本作のランディス監督とリック・ベイカーを丸抱えにして作られたのが1983年のMVの金字塔である「Thriller」な訳で、その意味でも本作の影響は意外にも大きなものがある気がしますね。

まぁ、それとは別に男性目線からすると主人公デビッドを献身的に支えようとする看護婦役のジェニー・アガターの良い女ぶりについては今見ても十分に魅力的でその点だけでもお勧めしたいところです。
Eike

Eike