この男は何をしにきたんだろうか?
ということを考えつつも、
田園風景に突如として現れる山間の村。
その地形に沿った独特な造りの奇妙さと、
白い壁に窓だけ水色に塗装された家々が美しい。
テヘランからやってきた携帯電話を持っている主人公に対し、
村では自給自足の暮らしが続いている。
どうやら男は何かの取材に来たようで、
死期の近い老婆の容態を気にしている。
でもそれがなぜなのかはなかなかわからない。
カメラさえ持たないでただただ死を待つ男と、
穴を掘り続ける顔の見えない男。
一緒に取材に来たクルーたちもなぜか顔が映らず、
村の人たちとの日々の会話だけが淡々と続く。
村の教師だけは取材の目的に鋭く気づき、
そこでようやく取材の目的が見る側にもわかる。
その村独特の風習についての話は、
男が取り組もうとしている仕事とも複雑に呼応する。
問題があるからこそ取材するけれど、
そもそもそれを伏せて取材しようとしていることも含めた取材自体の加害性。
また単純に死ななければ成立しない仕事であるゆえ、
その死を待ち侘びていることの罪悪感。
苛立ちの矛先を子どもに向ける失態もありつつ、
結局は目の前の命を救うために奔走する男。
一言で言うなら人間くささなんだけど、
本当にしつこく繰り返す携帯電話が表すように
映されない都会の日常はそれを吸い取ってしまうのか。
骨を投げるってそれは2001年オマージュか?