りっく

アベンジャーズのりっくのレビュー・感想・評価

アベンジャーズ(2012年製作の映画)
4.3
『マーベル・コミック』のヒーローたちが夢の競演を果たした、まさに「オールスター感謝祭」のような作品。ツッコミどころ満載の細部には積極的に目を瞑るとして、「祭り」としていかに「燃える」「アガる」展開を用意できているかが本作の勝負である。そんな全世界の期待をジョス・ウェドンはサービスに次ぐサービスのてんこ盛りで応えてみせる。

まずタイトルが出るタイミングが最高だ。
四次元キューブを敵に奪われたことで地球が危機に瀕してしまう。これからどうすればよいのかという最中で、「待ってました!」とばかりに『AVENGERS』という字体が、文字通り「立ち上がる」のだ。アガり所をきちんと押さえた演出に、映画序盤からアドレナリンが湧いてくる。

そして何といっても終盤の市街戦。天上界VS地上界というスケールの大きさ。個々の市民を助けるようなミニマムな描写はなく、最近流行りの「ヒーロー」についての批評もない。中盤グダグダした鬱憤を晴らすように、とにかくヒーローたちが暴れ回り、さほど強くない敵を次々と倒していく。重力や気圧を無視するように、空中や地上といった空間を縦横無尽に移動するダイナミックなアクションに魅せられる。画面上を次々とヒーローが横切っていく高揚感がたまらない。

6人のヒーローが一同に集結する画をバシッと見せてくれるのも素晴らしい。1度目は街の中心で6人が輪になって周囲を見回す場面。2度目は6人がロキを睨みつける場面。そのカメラの動かし方、配置の仕方、光の当て方のイチイチに膝を打つ。その画一発で、この夢の企画が実現してよかったという気持ちにさせられる。

そして彼らは戦いを終え、ユニホームを脱いで散り散りになる。その私服姿、そして乗りこなす車の何とカッコいいことか。エンドロールでも、戦闘で装着したスーツや、使用した武器をきちんと見せる。「祭り」の余韻が漂う、見事なサービス精神だ。

だが、その「おもてなしの心」はエンドロール後まで行き届いている。6人のヒーローが汚らしくて狭い料理店でテーブルを囲む滑稽な姿。まるでオフ会のような光景は、「祭り」の後の徒労感や、まるで感じが打ち上げ会場のセッティングに失敗した残念感が充満している。この「打ち上げシーン」できちんと終わらせるあたりも、ジョス・ウェドンという男が信頼できる証拠だ。

ヒーローたちのカッコいい姿を存分に堪能させ、最後には作品全体に漂うコミカルなトーンにあえて下げて幕を閉じる。「燃える」「アガる」アドレナリン全開のお祭り映画。年に1度は、ハリウッドしか作れないような「お祭り」にぜひ参加したい。
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