一人旅

アダプション/ある母と娘の記録の一人旅のレビュー・感想・評価

4.0
第25回ベルリン国際映画祭金熊賞。
メーサーロシュ・マールタ監督作。

女性監督として初めてベルリン映画祭最高賞に輝いたハンガリー映画で、未亡人と若い娘の友愛を見つめます。

夫を亡くし、妻子持ちの既婚男性と不倫関係にある43歳の中年女性:カタと、寄宿学校で学び、恋人との結婚を切望している少女:アンナとの邂逅と友愛の形成を丹念に描いた“女性ドラマ”で、共通点がない上に大きく年の離れた二人の女性の疑似親子的な関わり合いを映し出していきます。

子供を望みながらも愛人からは聞き入れてもらえない孤独な中年未亡人と、親に見放され結婚で自立を図ろうとする少女との友愛の形成を物静かに見つめた作品で、主演のベレク・カティが行き場のない母性を少女に向ける未亡人を繊細に演じ切っています。そして、『コンフィデンス/信頼』(1979)、『メフィスト』(1981)、『ハヌッセン』(1988)等、特にイシュトヴァン・サボーの傑作で才気を発揮したハンガリーの名カメラマン:コルタイ・ラヨシュによる人物の表情や肢体に肉迫したモノクロームの寥々たる映像には、70年代東欧ハンガリーの閉塞的な時代の空気そのものが同時に封入されています。
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