垂直落下式サミング

ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.2
「ドラえも~ん!牧場を作ってよぉ」
のび太の口から垂れ流される無理難題。ドラえもんは未来でどら焼きの特売があるからとその妄言を突っ跳ねる。最早あまりにも見慣れたこの光景。しかし、これは大長編ドラえもんだ。30分のテレビアニメとはひと味違う展開をみせる。
ひょんなことから緑の小惑星を手に入れたのび太はそこを牧場とし、無機物に命を与えるネジ巻きで生命体となったぬいぐるみたちを解き放つ。まさに命の鼓動なき無垢の星に生命の種を撒く創造主となるのだ。
そこに熊虎鬼五郎なる脱獄囚が逃げ込み暗躍。自身のコピー人間をつくり武力による星の支配を目論む。熊虎鬼五郎。恐ろしい名だ。牛島辰熊の次に名前がいかつい。二匹の猛獣と伝承の妖怪を名に持つ男ともなれば、その凶悪性は語らずとも伝わってくるだろう。そんな危険な男とドラえもんたちと惑星の命運をかけた戦いが始まるのであった。
無垢だったぬいぐるみたちのなかに意志が生まれ、長が生まれ、自治が生まれ、法が生まれ、やがて彼等は創造主たちと対等以上の言葉をを持ち、のび太たちに貿易と外交を持ちかけはじめる。
その様はさながら人の支配の手から離れようとするオートマタのようで、物語は重厚な哲学世界へと発展しそうな骨太SFの様相。科学への警鐘。大自然の猛威。宇宙の神秘。剛田建設の廃業。様々な“学び”が試練となってのび太たちの前に立ちはだかるのだ。
大筋はそんな感じだけど、基本子供向けなのであんまり小難しい領域へは深く踏み込まないほんわか設定なのが嬉しい。
誰得なのかはわからないがエンディングがYAZAWA。