スローモーション男

サンライズのスローモーション男のレビュー・感想・評価

サンライズ(1927年製作の映画)
5.0
 これが映画史に残る名作なのが分かった。
 非の打ち所がない完璧な映画

 田舎に住む夫婦。夫は都会の女と不倫をし家族をほったらかしている。都会の女に妻を殺せと唆され、ボートから落とそうとするが、寸前でやめる。妻は都会へと逃げて、夫は追いかける。そのうちにふたりの愛はまた燃え上がる。

 ストレートな物語構成ですが、スリラー、ホラー、ラブロマンス、コメディなどジャンルを横断し、最後には壮大なクライマックスを迎えるのです。

 なんと言っても撮影が凄すぎる。F.Wムルナウの作品は初めて観ましたが、ドイツ表現主義をハリウッドにも持ち込んでいて歪んだセットや明暗がくっきりとしたライティングで映像にしかできない表現をやってのけ、キャラクターの心情を浮き彫りにしています。
 また、編集技術もディゾルブを多用して幻想を見ているような映像テクニックをしている。テロップにまで工夫を施してます!

 そして何より冷めきっていた夫婦の愛がまた再熱していく演出がうまい!あの他人の結婚式で許しを乞う夫とそれを受け入れる妻が新婚夫婦と重なりあい、教会の鐘の音とともに二人の人生がリスタートするんです。
 その後の床屋でのシーンやめちゃくちゃデカイ遊園地でのやり取り(小ブタを捕まえたり、農民の躍りを披露する)で、本当に人生を楽しんでいる二人を観て幸福感が訪れます!!!

そしてクライマックス。月明かりに照らされながら舟で家に帰るのですが、嵐がやってくる。転覆し夫は助かるが妻はどこにもいない…。必死に探すがいない…。絶望に暮れた夫は都会の女を殺そうとする。都会の女が本当に嫌いだった😱
しかし、そこで奇跡が!!!

もう感無量です!!!
これこそが映画の魔法ですよ!!!
私たちは約100年前の映画を観て、その中の人々の愛で感動している。時代や国を超えて伝わるこの芸術の素晴らしさ。
映画を好きで良かったと思えます。

フランソワ・トリュフォーも「世界一美しい映画」と言ったのが分かる。
この愛の物語を超えることはできるのだろうか。