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マンディンゴのくりふのレビュー・感想・評価

マンディンゴ(1975年製作の映画)
3.5
【奴隷は黒人だけじゃない】

レンタル始まった頃から気になり、タラジャンゴに併せてみてみたら、反骨精神あるエクスプロイテーション・メロドラマで、面白かった!

南北戦争前の時代、とある奴隷牧場での、主と家畜による鬼畜な物語。

1975年の本作、黒人差別の考察より、嫌悪の叫びが先に出ていますね。先住民虐殺を描いた1970年の『ソルジャー・ブルー』と似た叫びで、あそこで始まる流れの先にあるものだろうと思います。でも叫んでも、映画としてはまだ、思考停止して終わっていますね。

Potboiler(粗製濫造小説)らしい、原作の影響は大きい気はします。ただただ衝撃的…ロジャー・コーマン的炸裂感に満ちていますね。キワモノ映画ではないですが、奴隷牧場の日常を描いたら結果的に、キワモノぽくなっちゃった…という、正直な作品だろうと思います。

また当時の、イラストでのポスターを見るとよくわかりますが、『風と共に去りぬ』のパロディを狙っている部分がありますね。あちらが隠し、捨てた部分を拾い集めて作ったような反骨感。キレイごとをこうしてひっくり返すやり方、私はわりと好きですが。

私の一番の衝撃は、奴隷牧場という舞台そのものでした。作中では畑作や、他の動物(苦笑)での牧畜などは描かれないから、奴隷の養殖のみで商売していた…できていたってことでしょうね?

これは史実として知らないのですが、事実ならばホント、おぞましい。奴隷を家畜としか思わなければできない所業で、SFの世界に思えます。

現実の世界に目を転じてみれば、近いことは今も、起きていますが…。

が、マンディンゴ・ファイトが実際にあったかは確証ないようですね。

もうひとつの衝撃は、この牧場に嫁入りする白人女の行く末ですね。当時、奴隷は黒人だけじゃなかった、ということが彼女でわかります。演じたスーザン・ジョージさんは正直、巧いとは思えませんでしたが。

二階にある彼女の部屋へつなぐ階段は、効果的に使われていました。階段で事件が起き、緊張たもつ場となり、終幕へのつなぎにもなる。

主要キャストはハリウッド・スターに敬遠され、英国勢になったとか。確かにジェームズ・メイソンとスーザン・ジョージは英国人ですが、実質主役のペリー・キングは、英国男子に見えて米国人ですよね。新人だから出演?本作後はTV中心になりますが、影響あったのかな?

ジェームズ・メイソンの、黒人少年へ足を乗せる佇まいは強烈。でもこれ、この人物への反発より、呆れが先に来ます。阿呆に見える。むしろ、乗せられ少年の強かさに共感。幼いながらわかってますね。

人工照明を極力避けたものなのか、特に屋敷内での、暗さがよかった。作品のトーンにも合い、南部な生活感があります。

で、それらを覆う、無言のまま豊かに茂る、森の天然色が、数少ない息抜きでした。

<2013.5.9記>
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