青二歳

裸の十九才の青二歳のレビュー・感想・評価

裸の十九才(1970年製作の映画)
4.1
新藤兼人はバケモンだなぁ。
永山則夫事件、20歳の誕生日直前犯人逮捕。1969年4月。で、この映画が1970年秋公開。おかしいだろ。
母から続く貧困を細かく追い、集団就職から底辺の仕事へ流れ着く構造的な道を丁寧に描く。
原田大二郎がいい具合に透明で!彼が殺人に至る動機なんて無いんですよ。火サスみたいな具体的で感情的で、こちらがシンパシーを持ちやすいような理由は描いてくれない。ただ集団就職の車窓が流れるように、流れ流れていく。
というわけで永山にはかなり同情的、でも観客はまぁ同情しにくいんだこれが。(公開当時まだ死刑判決は出てません。一審で10年かかってる)

さて、この映画で新藤兼人おもろいなと思うのは、一見すると左翼が喜びそうな種を撒きつつ、青森から上京したての勤労少年の目にうつる左翼の姿を突きつける所。
あなたたち労働者のために戦っていたらしいですけど、その勤労少年はあなたたちを羨望の眼差しで見ていますよー。ある意味で彼の熱視線は一番冷ややかな視線なのかもしれませんね。

集団就職と高度経済成長と、私が現代の日本の生活水準で生きていられることは切り離せない以上、改めて集団就職とはなんだったのかを考えてみたくなる。と思ったら新藤兼人、集団就職がテーマの映画を残してる。“一粒の麦”1958年。興味深い。
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