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さらば、わが愛 覇王別姫のクリームのレビュー・感想・評価

さらば、わが愛 覇王別姫(1993年製作の映画)
3.9
1920年代から約50年、中国の激動の歴史に翻弄された京劇の役者小豆(蝶衣)の悲恋を描いています。京劇という伝統芸能が、その時の支配者たちに左右される様は意外でした。レスリー·チャンの女形が妖艶で美しく、京劇の世界を覗く事が出来る貴重な映画で、豪華な衣装や調度品も素晴らしかったです。



ネタバレ↓




娼婦の子として生まれ9歳で、孤児や貧しい子供が預けられる京劇俳優養成所へ連れて来られた小豆(蝶衣)。指が6本ある多指症で、入門を断られると母は彼の指を切断し、置き去りにしました。養成所内でのイジメから守ってくれたのは、子供達のリーダーの小石頭(小楼)でした。そして、彼と共に厳しく過酷な稽古に耐え続けます。この稽古が厳しく体罰も激しかった。失敗をすれば、お尻を叩く折檻や雪の中、水を張った洗面器を頭に乗せて何時間も立たせる罰等が待っていました。そんな日々の中、小石頭だけが頼りの小豆が、彼を愛してしまったのも自然な事だったのかも知れません。
青年になった小豆は程蝶衣、小石頭は段小楼という芸名になり、2人は京劇で『覇王別姫』という演目で、スターへと登りつめました。
蝶衣は女形を務め、芝居とは思えない程の愛情と慈しみを込めて演じます。虞姫が覇王に向ける愛情と自分の小楼への思いと重ねる様に…。
小楼が娼婦の菊仙と結婚すると蝶衣は、荒れ始め、京劇界の重鎮·袁四と肉体関係を持ち薬物に溺れていきます。そんな蝶衣を小楼は支え再び舞台に復帰しようとしていましたが、共産党から京劇関係者たちは堕落の象徴として晒し者にされます。蝶衣が拾って育てた小四は陰でこの共産党の動きを支援し、小楼や蝶衣を陥れます。彼等は、人民の前に晒され、仲間の告発を強要されました。小楼は耐えきれず蝶衣が日本軍や国民党軍の為に舞台に立ち、アヘンに溺れている事、袁四との関係も暴露します。
一方、蝶衣は小楼の裏切りに傷つき、菊仙が娼婦だったと暴露し、小楼は命欲しさに菊仙を愛していないと言い出し、菊仙はショックを受けます。混乱が収まると、菊仙は自ら命を絶ちます。
11年後。京劇を排除しようとしていた者達が権威を失い、蝶衣と小楼は再び共演することになります。京劇の芝居の中で、蝶衣が本物の剣を使い命を絶って、物語が終わります。
段小楼を愛する事は一生止められない。想いが叶う事もない。それなら虞姫として、覇王に愛されたまま亡くなりたいと思ったんじゃないかと思います。また、京劇の世界しか知らない蝶衣が、京劇の中で人生を終わらせようとした様にも思えました。
京劇と言う良く知らない世界を映画を通して知る事が出来て、興味深く鑑賞しました。3時間近くと長いのですが、気になりませんでした。それにしても密告合戦がいかにも中国的だった。
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