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プリンス/パープル・レインのcatmanのレビュー・感想・評価

5.0
1984年公開。我が最愛の殿下の出世作と評されることも多い本作は、確かに自伝的な内容ではあるものの、例えば『ボヘミアン〜』と比較すると創作要素が極めて強く演出も演技も稚拙で映画としては明らかにチープ。ただそこに映画批評的な視点は無意味で、これは音楽が主役の作品であり、アーティスト本人=本物だからこそ放ち得るオーラと存在感そしてパフォーマンスをリアルタイムでフィルムに焼き付けている事そのものが偉業と言える。拙い演技もファンにとっては味わい深く愛しく感じられるもの。ウェンディ&リサの小芝居が観られるのはパープルレインだけ!

サブキャラの中で私のお気に入りはモリス・デイとジェローム・ベントンの二人。メインキャストの殆どが役者としては素人同然、薄っぺらになりがちなドラマパートに幾らかの深みとユーモアをもたらしているのがこの二人の個性的キャラクター。何気ない「The Password is WHAT」のコミカルなやり取りが楽しい。実際のところモリス率いるバンド『ザ・タイム』はマジホントに最高。Oh Lord! またミネアポリスという舞台も本作の個性を際立たせる要素のひとつで、演奏される楽曲が伝統的なソウルやR&Bではなく、ニューウェーブ風味のシンセが特徴的なファンクロック「ミネアポリスサウンド」である事は映画全体の重くなり過ぎないトーンに与えるkeyのひとつだと思う。「First Avenue」行ってみたいなぁ!ヒロインのアポロニアもセクシィ&キュート。

不世出の天才プリンスの一般的なブレイクのきっかけとなった傑作アルバム『1999』のリリース後と言う完璧なタイミングで製作され、そして狙いすました様に世界規模の大成功を収めたのはお見事。アォア!
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