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昭和やくざ系図 長崎の顔のdiesixxのレビュー・感想・評価

昭和やくざ系図 長崎の顔(1969年製作の映画)
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渡哲也主演、日活制作のヤクザ映画。監督は野村孝。
刑務所でのお務めを終えて故郷長崎に戻った高間組若頭慶二(渡哲也)。不在の間に長崎の興行は新興勢力の松井組に支配されていた。三代目を襲名した慶二は、長崎での興行を始めるが、松井組から執拗な嫌がらせを受ける。
三角屋根駅舎や高架工事前の長崎駅、鉄橋前の歩道橋、平和公園近くのホテル青雲閣、長崎空港前の大村空港などなど懐かしの長崎の風景がふんだんに出てくるのが魅力。三菱長崎造船所のドックや大浦天主堂、県庁坂などもさりげなく登場する。少し先に撮られた『網走番外地 望郷篇』よりもロケは多いのでは。

ヤクザの興行合戦なので、今はなき長崎市公会堂も頻繁に登場し、コンサートの様子もスタジオでなく公会堂内で客を入れて撮られている。そして、高間組が呼ぶのはなんと内山田洋とクールファイブ!!同年の大ヒット曲「長崎は今日も雨だった」を若き前川清が歌う様子がしっかりとフィルムに刻まれている!

地元の芸能興行ビジネスが、どっちにしろ反社なのかよ!という気もするが…原作小説は長崎新聞掲載とあり、まあ、まだヤクザが世間に受容されていたおおらかな時代である。そんな時代を象徴する映画スター安藤昇も出演。渡の敵役だが、義理堅いので戦わず、見せ場はあるものの、ストーリー上はいてもいなくても同じような役になっいるのが残念。

慶二は被爆者で原爆症に悩まされているという設定も効いている。ラストの字幕で長崎刑務所浦上支所で獄死したと出るが、浦上支所は原爆で焼かれて、当時はすでに存在せず、何かメッセージ性を感じる。

知り合いの広告代理店に聞いたところによると、監督の野村孝は、長崎県ではお馴染みの銘菓『長崎物語』のコマーシャルフィルムを撮ったこともあるらしい。この作品が縁だったのかな。
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