ルサチマ

東京暮色のルサチマのレビュー・感想・評価

東京暮色(1957年製作の映画)
5.0
再見。小津映画の中でこれほどまでに言葉の響きが切実に聴こえてくる映画はあっただろうか。もちろんそれは声だけにとどまらず、最後の子供をあやすおもちゃの音の響きなど、細かな美術装置の音の聞こえ方にも当てはまる。
そして正面からの切り返しと言う前に、徹底された横顔の芝居が気になって仕方ない。横顔といえば『秋刀魚の味』の杉村春子もまた、小津の横顔を象徴するような佇まいだったことを思い出す。説話的には言うまでもなく、画面の照明もあまりに暗い。暗すぎるこの小津映画は何を観客に隠蔽していたか。画面の闇に隠蔽されたなにかが強烈な喚起力を伴ってフレーム外へと呼びかけている。
ルサチマ

ルサチマ