皿鉢小鉢てんりしんり

東京暮色の皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

東京暮色(1957年製作の映画)
3.7
小津の中で1番暗い、という定説を聞いていたが、なんだかんだいつもの小津。終盤こそ深刻な劇伴が流れるけど、基本はどんなに陰惨な話をしててもいつもの小津……
というかいつもの小津のテンションで、闇の世界が見せられるので、暗いというよりはすごく妙な気分になる。深夜の喫茶店で有馬稲子に絡んでくる変態っぽいジジイとか……
ガキができて、正直あんたの子かどうか、みたいな暗黒のお話を殺風景な埠頭でする時に、インダストリアルな夜景と環境音、といった映像が入るシーンとか『イレイザー・ヘッド』すぎて寒気がする……

有馬稲子の絶対に笑顔を見せない顔面は、この映画そのものを体現するようで、キーヴィジュアル力が高い。『秋津温泉』の岡田茉莉子の横顔に匹敵する。
最後笠智衆が「死にゃせん」って言ってるし、昔の列車はスピード遅いから大丈夫だろって思ってたら、死んだからびっくりした。
原節子と笠智衆が、有馬稲子の死体挟んで、やっぱり子どもにはお父さんが必要だと思うんです、とか言い出すあたりもやばい。そこに死体あるんだぞ……