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東京暮色のthornのネタバレレビュー・内容・結末

東京暮色(1957年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

あまりにも無惨で陰鬱な内容は、イタリアのネオリアリズモのよう。その演出は濱口竜介やデビッドフィンチャーみたいだ、と思わずにいられない(逆なんだけど)。内容があまりにも斬新すぎて当時まともに評価できなかったんだろうな。映画の中の人物の内面が、心の中に入り込んでくる感じがする。キツイけど、心に確実に残る。男性の親としての不確実さ、というのがテーマとしてある気がします。小津作品に共通するこの社会における男性の不完全さが、呪いのようにまとわりつき、ダイレクトに強烈に、パチンコであたらない父親の俯く顔に投影されている。カウリスマキの枯葉の電車事故はこの映画の影響では?
不貞を働いた女が悲惨な目に遭う、というのはむしろ古臭く、旧態依然とした男性からみた女性観を感じるはずなのだけど、類い稀な演出がその女性の実存を実感させるあまりに事故ってしまい、意図せず現代社会に接続されたのが「東京暮色」だと思います。こういう映画は本当に稀有であるし、大好きです。演出がテーゼを大きく超越してしまった傑作。
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