珍獣

東京暮色の珍獣のレビュー・感想・評価

東京暮色(1957年製作の映画)
5.0
ミヒャエル・ハネケの映画を見てる気分になった……。
暮色、まさに暮色。

見終えてからのあの衝撃というか、ズーンと来る感覚が忘れられない。
小津の中でも屈指の暗さじゃなかろうか。

電線や鉄塔、建物の構図が相変わらず見事。
惚れ惚れするほど格好良く撮るのだ。

工場地帯の煙にまみれたきったない海がかっこいい。
そしてあの男の酷さ加減よ。

明子はこの物語内で一度も笑顔を見せていないのではなかろうか。
絶妙に分かり合えない(分かってくれない)周囲とのすれ違い。
そしてその勘違いと軋轢が最終的に明子をどこへ導くのか。

山田五十鈴の表情と手の仕草がすごい。
あの中華料理屋はいつ行っても奄美民謡の『安里屋ユンタ』が流れている。
数パターンの歌詞が存在する民謡だが、多分聞こえてきた歌詞からして、若い少女が失恋をする方の歌詞だと思う。
その歌詞がまた映画の内容と見事に重なっている。

洋題の「Tokyo Twilight」、カッコ良すぎる……。
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