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木枯し紋次郎や破れ傘刀舟みたく汚なすぎず、桃太郎侍やマツケンみたく華美過ぎない、虚飾のないルックスの時代劇。幕末、田舎、下級武士の3つのお題のおかげというか、黒澤明の映画で見られる的な時代劇としての生活感のリアリティがすごく説得力を持って描かれてる。下級武士たちの役人としてのお仕事がつまらなそうに描かれるのも写実的。この辺がリアルに描かれてるのでサナー演じる清兵衛がちょっとした身なりの違いで同僚の武士より困窮してるのも、貧しくても娘との生活の中に幸せを感じているのも丹念な丹念な生活描写で観ている側に伝わる。オーラスの見せ場でも清兵衛が生きて家に帰りたいと切望しているのが分かるからラストの上意討ちの後の映画的な感動がある。いつもちょっぴりウザい小林稔侍さん毎度のオーバーアクトもなんでかシックリきた。だからこそといって良いのか、最後の岸恵子の長ーいモノローグでの感動の追い討ちは実に映画的ではないなと感じてしましました。陽水パイセンの主題曲も時代劇の主題曲としては現代的すぎてどうなの?的な。でもこのへんは感じ方人それぞれ。
あとこの映画が語られる時によく聞く「清貧」という言葉も違う気が。清兵衛は望んで貧しくあるわけではなく、だから内職の手間賃も賃上げ要求をするし上意討ちの褒美として家禄アップも期待していたはず。貧しいことが正しいと思ってないからこそ、同じ境遇の上意討ちの相手のヨゴギエモンと一瞬でも心通わせたわけだから。
あと「田舎では使い手」な清兵衛の剣技がヒロイックにならず、ギリギリのところで命のやり取りをする真田広之のチャンバラ芸の深さ。
最後の戦い直前、清兵衛が自分の太刀の秘密を思わず語った時のヨゴギエモン(変換しねえ)の殺意に思わず劇伴が同調する「ビョボーン」という効果音みたいなやつにしびれた。
とても良い映画。