垂直落下式サミング

口裂け女2の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

口裂け女2(2008年製作の映画)
4.5
口裂け女は如何にして都市伝説の亡霊となったのか、そのオリジンが語られる続編。ごく普通の女の子は、如何にしてショタコンぶち殺しオバサンとなったのか、実際におきた事件をモデルにして亡霊の成り立ちが明かされていくわけだが、こちらはこちらで違った解釈で映画化しているため、第一作目との関連は薄い。
前作『口裂け女』は、鬱屈としすぎであんまり好みじゃないっていうか、映画化にあたっての新解釈がウザすぎて普通につまんなかったのだけど、この映画はなかなかいい。
まずもって、本作における口裂け女の設定が解釈一致。この世を呪いながら死んだ女性の亡霊が目的を失って妖怪化したものが口裂け女だと明確に定義しており、実体のない超常存在だとしていたサトエリ版の設定よりも納得度合いが高かった。
どちらかというと、口裂け女とはネッシーやビックフットのようなUMA系のオバケであり、噂話のなかでこそ恐怖を維持できる存在であるため、映像化しても貞子や伽耶子のようなアイコニックなキャラクターにはなれなかった。
そのため、Jホラークリーチャーのパワーインフレからは距離をおいて、『東海道四谷怪談』や『播州皿屋敷』などの古典的な女性幽霊物語へと先祖がえりした本作の方向性は正しい。これが、口裂け女を映画化する際の、ひとつの正解だと思う。
怨みによってついに覚醒した怒りのセーラー服口裂け女によって、きれいな顔立ちの女優さんが表情を歪ませながら切り刻まれていくのは、ジャッロ的な快感。その惨劇の舞台となるのが、これから紆余曲折を経ながらゆっくり衰退していくであろう昭和の地方都市というのも、映画に独特な渇きをもたらしている。
そして、印象的なラストシーン。いっさいの躊躇なく振るわれる刃、雨のシャッター商店街、佇む女は人間でなくなる、これが絵になりすぎて…。ちょっと予想外に大切な一本になってしまった。