湯っ子

陽炎座の湯っ子のレビュー・感想・評価

陽炎座(1981年製作の映画)
3.8
ほおずきの笛、私はちゃんと作れたことは一度もなかったな。だいたいいつも、最後に実をはずすところで、あのちいさな穴をすこしだけ破いてしまうから。お母さんはそんな時たいてい家の仕事をしていて、私のかわりに上手に作ってくれるのは、お父さんかおばあちゃんだった。その頃にはほおずきが女の魂なんて映画も、漢字で鬼灯と書くということも知らなかったよ。

浪漫三部作は、順番違いながらも、これで全てを観終わった。
この「陽炎座」は特に監督がやりたい放題やってる感じがする。次々と映し出されるとんでもない映像に、気持ち良く翻弄され、酔い痴れる。
鈴木清順は、女を撮るのが本当にうまいのだな。
三部作どれにも、「異界へ誘う女」がひとりいて、この女がことごとく美しくおそろしく描かれる。
「ツィゴイネルワイゼン」では妖艶だが奇行ばかりが印象に残り、「夢二」でははっきりとこの世の人を演じていた大楠道代が、この作品では「誘う女」となり、その幽玄なる美しさに心を奪われる。きっと、狐はこんな女に化けて人をだますのだろう。
松田優作のマッシュルームカットが似合わないのには笑ってしまったけど、この映画ではきちんとでくのぼうを演じているのが良い。原田芳雄はほんの少しの登場でも、映像から男が匂ってくる。楠田枝里子はここでもなるほど!ザ・ワールドな役だった。
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