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復讐するは我にありのABBAッキオのレビュー・感想・評価

復讐するは我にあり(1979年製作の映画)
4.0
 1979年松竹・今村昌平プロダクション合作。実際の殺人事件のドキュメンタリーを映画化した実話原作もの。犯人巌(緒形拳)の余りに日常的な殺人シーンのリアリティは迫真。最初の殺害後の動き(小〇で手を洗う、柿を「土産にならん」と言い捨てる)でこの男の異常さを浮き立たせている。巌の動機として示唆されているのが、厳格なカトリック教徒でありながら偽善的な態度をとる父との葛藤。三國連太郎演じる父と、倍賞美津子演じる艶っぽい巌の妻のねっとりとしたやりとりが、巌を取り巻く異常な環境を暗示する。そして懇ろになる旅館の女将(小川真由美)とのやりとり、殺人歴をもつ女将の母(清川虹子)とのやりとりも業を感じさせる。リアリズム的な描写だが、モンタージュや突然の場面転換、最後の散骨シーンの奇妙な現象など、非現実感も漂わせる。緒形の代表作の一つであるとと共に、都市化、先進国化しつつあった日本の歪んだ社会像を描いた名作。
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