竜平

ザ・ファイターの竜平のレビュー・感想・評価

ザ・ファイター(2010年製作の映画)
4.2
実在の異父兄弟ボクサー「ミッキー・ウォード」と「ディッキー・エクランド」の挫折と再起を、その中にある苦悩や絆や家族愛と共に描く。マーク・ウォールバーグとクリスチャン・ベイル共演で贈るヒューマンドラマ的伝記映画。

過去の栄光にすがり気味で性格にも少々難ありの兄ディッキー、過保護な母親、それらに振り回され悩む弟ミッキー。まずあるのがこの構図を軸にして巻き起こるドタバタにも似た家族模様。デヴィッド・O・ラッセル作品には自分本位な人物が本当にたくさん出てくるなと。これは『世界にひとつのプレイブック』あたりでも見れるやつね、今作もまさにそうで、主人公ミッキーのことを理解しようとしない周囲の人物たちにきっとイライラさせられる。でもじつはそれって愛情のひとつの形でもあって、個人的にはこーゆー人間模様、もちろん歯痒い気持ちにはなるけどもなんとも見入ってしまうなと。兄ディッキーはやがて落ちるとこまで落ちて、それぞれの関係は割れるとこまで割れて、そこからまた始まっていくドラマというもの。ミッキー・ウォードに関して言えば、人間関係に於いてこんなにも雁字搦めになったら普通どこかで爆発してもおかしくない、ヒステリー起こすわってな状況なのに、自らの可能性を信じつつ、また家族を見放すこともせず、逆境とも取れるそれをバネにして突き進んでいく。本当に強い男だなと思うし、そんな彼に動かされて周りの人間が再び繋がっていく様にグッとくる。ここではエイミー・アダムスが恋人役を好演してたり。また今作はボクシングのシーンがなかなか本格的で、これにも見入ってしまうこと請け合い。フラストレーションにも似たすべての流れを踏まえてのラストの試合なんかはめちゃくちゃかっこよくて、とにかく燃えるはず。

一本の作品としての流れが素敵だなぁなんて。見終わった後で胸の奥に余韻が残るような、良きヒューマンドラマ。好き。ちなみにカメレオン俳優クリスチャン・ベイルは今作でも役作りのために過度な減量、更に歯並びまで変えたんだとか、恐るべし。
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