ちろる

星空のちろるのレビュー・感想・評価

星空(2011年製作の映画)
4.4
芸術家のおじいちゃんと美術商の両親の元で想像力豊かに育った主人公の少女。
ヨーロッパのアパルトマンのようなお洒落なおうちと、お伽話に登場するようなおじいちゃんのアトリエの映像はそれだけでワクワクさせるのに、主人公の与えられたのは甘い時間だけではない。
不思議な転校生に惹かれた少女はひとときの夏を少年と過ごす。
心と心で分かり合えた少年への想いは初恋だったのか友情だったかは分からないけれど、その微妙な行ったり来たりが胸の奥をギュッとさせるそれはそれは素敵なジュブナイル。

「パパとママどちらと住むか、自分で決めなさい。」
残酷な現実と、夢のような星空の中。
自分にとって何が必要かも、何を失ってはいけないかも人間分かるわけないのに、現実の世界は次から次へと少女たちに決断を迫っていく。
銀河鉄道999のように、夜空を駆け抜ける車両だけが2人を優しく包み込んで、逃げてもいい、笑顔だけを守ればいいさと言ってくれる。
昼間があんなに辛かったのにおじいちゃんの住んでいた森の中の日差しはとてもきれいで、もう大丈夫だと思った。
少年少女だけで森の中に迷い込むのは不安な気もするのに、この物語の森は緑の匂いが香り立つようで。恐ろしい感じはしない。
優しかったおじいちゃんが森そのものになって、少女を包み込んでいるのかもしれない。

パズルのピースは一つ抜けば、出来上がった絵も跡形もなくポロポロと崩れ落ちるけど、どうしたってなくならないものはある。
温かいおじいちゃんの笑顔と、足がない寂しがりやの象、そして欠けた星月夜のパズルのピース、その一つ一つの瞬間が切なくも優しい気持ちにしてくれた素敵な素敵なお伽話でした。
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