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太陽を盗んだ男のmigihidariのネタバレレビュー・内容・結末

太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「プルトニウムと寝て子(原爆)を身籠った主人公に目をつけられた山下警部が認知を迫られる物語」

主人公・城戸の心の内や過去は作中では語られないため、解釈の大部分は観客に委ねられているようです

目の前に突然現れた、山下警部という男に城戸は執着します。なぜでしょうか?
市民を守る正義の味方、その擬人化そのもののような山下警部は、城戸にとって「理想の男性像」だったのでしょうか?

しかしそんな山下警部は、対峙したバスジャック犯を油断させるために息を吐くように嘘をつきます( 犯人は直後に射殺)
その欺瞞は、終盤の山場での「ローリング・ストーンズなんて来ない」という台詞でも改めて明確になります

憧憬と失望が入り交じった愛憎、手に入らない理想の父性へのコンプレックスが、空っぽな城戸延いては日本という国のお腹に原子爆弾を孕ませたのかもしれませんね
そりゃお前の子だろ!責任とれ!って言いたくもなるよね(曲解)

「ある種の父殺し」の物語であると監督は語ったそうですが、確かに城戸は山下警部のことも、日本のことも殺してしまいました

・映像について
スタッフが検挙までされたと悪名高い、体当たりゲリラロケのおかげなのか、街や建物、人までもが当時の空気そのままに、ドキュメンタリー映像のように生々しく存在しているように感じられます
よく見知った街や施設のなかを縦横無尽に駆け回る、顔もキャラも濃すぎる登場人物達

ちゃんと首都高を引きで写して大爆走しちゃってたり、材料を集める買い物は電気街(たぶん)、今はなき新宿コマ劇や東急百貨店の懐かしの屋上遊園地、皇居に国会議事堂(撮影許可なし、とのこと。まじで?)、そして武道館!
まさに在りし日の「東京観光 ムービー」としても楽しめるんですね

その他
・劇伴が最高
・猫ちゃんの名前はゲノム(うろ覚え)

原爆DIYシーンで、試験管に分けられたプルトニウムがまるで紫キャベツなんかの色水でやる小学生の科学実験のように見えて、演出かな、と思っていたら、どうやら本物もこんな色をしているらしい。恐ろしや
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