常夏のバカンス

メメントの常夏のバカンスのネタバレレビュー・内容・結末

メメント(2000年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

感想

時間遡行というか再編集?時系列の仕組みがわかればそこまで複雑でもないのに、どうしてこんなに斬新で考えさせられる話に見えるんだろう。なぜなんですか?

映画の本筋とはずれるけど、主人公の哀しさといったらない。記憶を忘れてしまうのはむしろ救いか。

観ている側からすれば、今が更新されないまま過去の記憶に囚われ人を殺し続けるなんて亡霊じゃないか、それって生きていると言えるのか?という疑問を感じるほどにやるせない。

しかし彼を亡霊と呼ぶなら認知症患者や動物たちみんなが死んでいることになってしまう。たとえ忘れてしまっても、彼らのした行動も彼らが感じた喜怒哀楽も確かにそこにあったのだし、なかったことにはならない。記憶が人を人たらしめるのかといえばそれだけではない、というのが答えだろう。遺伝子上人なら人だ。食事を摂りながら誰かと語らう、文字を書く、車を運転する、体毛を剃る、誰かを想う、眠る、こういう些細な行動だって人として生きているからこそだし、記憶の有無に関係なく成立する。レナードは生きている。

それなのに彼を亡霊と呼びたくなってしまうのは、ずっと過去に囚われ行動しているからかもしれない。認知症の老人も過去の話を繰り返しするけれど、過去のためだけに行動しない。取り返しのつかない過去とその清算に拘り続けることが「亡霊」と感じさせる原因なのではないか。それが済んだら生きる意味がなくなってしまうから。

今作と全然関係ない話をして恐縮だが、ジョジョの奇妙な冒険の第8部に「『幸せ』っていうのは・・・・・『思い出』を誰かと共有することよ」というセリフがある。
今後、レナードは誰かと思い出を共有して確かめ合う幸せを感じられないままなのかと思うとより一層悲しい。

テディは自分の欲望のついでにレナードに生きる意味を与えてやっていた、というようなことを言っていたが、むしろテディがレナードを亡霊、もっと言えば悪霊にして仕立て上げてしまったんじゃないかという気がする。あんな陽気な顔しておいて内面が邪悪すぎるだろ。


自分にはよくわからなかったけど、観た後色々考えちゃう映画だったしたぶんいい映画なのだろう。もう何もわからないし信じられない。自分の記憶もメモも何一つ確かとは言えないから。