垂直落下式サミング

名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.8
ワンボックスカーを運転するおっちゃんが、前方不注意で高速道路のカーブをドリフトする。タイトル前の見せ場にしてはちょい地味だが、コミカルで悪くない。
ハイエース苦手なんだよな。日雇いと派遣の記憶がフラッシュバックするから。朝早く集まるのに働くの三時間後とかだし、軽作業という名の重労働だし。まったく、オトナは嘘つきなのです。
あの排気音きくと、駅前の喫煙所で集合時間までたむろしてたアダルトなフレーバーのなか、薄暗い車内でもう一人乗れるからって横に詰めて座る密着感と、両隣もその前も項垂れてるおっさんたちの顔を思い出す。そんなPTSDを患っています。
さておき、今回は遊園地が舞台の劇場版のコナン。謎の依頼人に、蘭や少年探偵団を人質にとられた状態で謎解きを迫られ、余儀なくされてしまうタイムリミットサスペンスの様相。
ほとんど手がかりがなく切羽詰まった状況から足で情報を稼ぎ、途中で敵の襲撃を掻い潜って真実に近づいていくのは、ミステリーってよりはノワールっぽい。
高木刑事と佐藤刑事が、休日デート中なのにたくさんの警察官が動員される大事件に遭遇してしまって、大勢の同僚に交際がバレてしまうラブコメがあったりとか、元太が爆弾を持ってジェットコースターに乗ってしまい、レールの途中で起爆してしまうからみんなで大慌てする大スペクタクルなど、細かいところでも一難去ってまた一難と、長寿漫画ならではの要素をフルに使った見せ場が連続するから、みていて飽きなかった。
個人的には、毛利小五郎の活躍がうれしい。警察に詰められる場面では、いつもはコメディレリーフなおっちゃんがメグレ警部たちに異常事態を知らせつつ危機をやり過ごすなどして、カッコいい機転の利かせ方をしていたのがよかった。
その後、毛利の活躍がなかったのが残念。おっちゃんがとんちんかん推理を披露したら爆破されちゃう大変だっ!と、コナンと服部に最後まで格下扱いっていう報われなさ…。
今回の毛利は、珍しく電話で奥さんに弱音を吐くなど、思わせ振りな行動をするから、『水平線上の陰謀』みたくダンディー&ハードボイルドなレア毛利かと思ったのに…。おっちゃんの推理は、コナンによって途中で強制終了してしまうけど、彼は彼で独自の方向から真実にたどり着いていた説をおしたい。