ヒッピー・ムーブメント最盛期の60年代ニューヨークを舞台に、幻覚剤"LSD"に縋りついてしまう人々の日常を描いている、セミ・ドキュメンタリー作品。製作国はイタリアであり、音楽をアルマンド・トロヴァヨーリが担当している。

屋外のゲリラ撮影と実録映像を絡める手法が刺激的だが、あくまでも劇映画がメイン。多種多様な境遇に置かれている人物たちが、ナンダカンダとあった後に、結局LSDに手を出してしまう。社会的階級に関係なく、LSDに辿り着いてしまう人間の悲劇性。

LSDはシャーマニズムやカルトと紙一重のものであるため、癒やし（意識革命）を求めている人間の心の隙間に、悠々と入り込んできてしまう。善にもなれば悪にもなる、いわば「インスタント神様」のようなもの。

アシッド・ムービーとしては大味であり、同年の「白昼の幻想」に比肩するレベルとは言い難いが、作品テーマが根底から異なっているため、致し方なし。「LSDの存在意義を提起する」という観点では、真摯さ、誠実さが伝わってくる。