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ホープさん サラリーマン虎の巻の一のレビュー・感想・評価

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すごい笑った。庶務課の奥の席でボンヤリ座って普段なんの仕事してるんだ小林桂樹、というかこの会社自体何してるんだとの疑問は残るけど、そんなことはともかくサラリーマンは忙しいのだ。野球部の親善試合とか、社長の愛人の世話とかで。そういう風刺というには悪意の足りない、下らない些事を次々とコメディに転化させる巧技に笑いを通り越して感心してしまう。「西洋料理を箸で食べる夢を見ていたよ」という面白発言でお目覚めのハゲヅラ社長・志村喬が、他の乗客が飯食ってるのを恨めしそうに眺める目付きであれだけウケるんだし、駅で弁当買う程度のことであれだけ観てるこっちの気が急くのだ(駅員に取り押さえられる桂樹と遠ざかる志村喬の切り返し面白すぎる)。大袈裟な音楽が良い仕事してる。重役専用ゾーンの不条理感漂うセット美術は安っぽさが寧ろ効いていて良い。桂樹の恋人・高千穂ひづる(デビュー作)のドロップアウト兄・大森義夫のチクリとした出方や、これまでのトーンを台無しにするような苦いエンディングが半端に謎めいている。やたらと長いスクエアダンス大会のシーンも好きだなー。
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