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RENT/レントのtakのレビュー・感想・評価

RENT/レント(2005年製作の映画)
4.0
予告編を観てビビッとくる映画ってときどきある。僕は「レント」の予告編で、Seasons Of Love を聴いたとき、それを感じた。大きなスクリーンの上で映像と音楽が一体となった瞬間の感動。「レント」はブロードウェイミュージカル。映画は舞台の良さと映画的表現が共存する演出となっていた。

ここ最近ブロードウェイミュージカルの映画化が相次いでいる。しかし、「レント」は「オペラ座の怪人」や「シカゴ」のような往年のスタイルをもったミュージカルとは違う。それは80年代の終わりから90年代初めの時代の空気を切り取ったような題材だからだ。エイズの恐怖が世界を襲い、まだ多くの人々が病気に対する知識を持たなかった時代。同性愛者に対する偏見や差別と戦いながら自分を探し続ける主人公たち。オペラ「ラ・ボエーム」の登場人物を下敷きにしたということだが、芸術家というよりも、彼らは自分を様々な形で世に示そうとする表現者たち。言われなき差別と戦いながら「戦争の反対は”創造”だ!」と叫ぶ彼らの群舞に、僕は圧倒された。

キャストが舞台に並んで誰もいない客席に向かって歌う。この場面で僕は映画の世界にグッと引き込まれた。舞台劇への敬意。そこから先には映画的な仕掛けや工夫が凝らされていた。Tango: Maureen の場面が突然変わる演出や、マークが自転車で走り回るのを捉えた躍動的な場面。エイズ患者の会で一人ずつメンバーが欠けていくのを、映像で表現する巧さ。このあたりは今や職人監督となったクリス・コロンバスのうまさだろうか。ソツなく演出され、見せ場もあり、見せ方も巧い。

エンドクレジットが流れ始め、僕は「もう一度Seasons Of Loveが聴きたい・・・」と思った。次の瞬間、それが流れ始めたとき涙した。このミュージカルを創った表現者の思い、音楽の持つ力の偉大さを改めて感じた。
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