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RENT/レントのkrhのレビュー・感想・評価

RENT/レント(2005年製作の映画)
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オリジナル演出版の舞台を観る機会があり、映画版を改めて観たら舞台版を愛情をもって昇華させた今作であることがわかってすごく感激した。そもそも出演者もオリジナル舞台の役者陣が多く集ったものだという時点で作り手の愛情はひとしお、細かいところを挙げればキリがない。

本来2幕にあるSeasons of Loveのシーンを映画冒頭に持ってきている。一列に並んで歌うという、映画では不自然にしかならない絵面を、物語の姿勢を表す挨拶にしていることで、鑑賞者を引き込むことに成功している。自分はここですでに泣いてしまう。

セットが変わらずに物語が展開する舞台版ではシチュエーションがわかりにくい部分も、場所やカットが変えられる、映画の利を生かした演出がきいている。モーリーンのタンゴ、地下鉄のサンタフェ、教会のシーンあたりはもう大成功なのでは。
下から見上げるアングルや、寄りの画、階段を下りながら追うカットなど、舞台ではできない視点を多用しているのも印象的。

逆に、舞台版ではできていた同時多発的なエモーションの高まりは表現できなくなっているが、シンプルに焦点を当てる作りにしているのでどのエピソードにも感情移入できる。(人間関係やシーンの改変も、シンプルで分かりやすさを目指した結果だと思う)

セリフを歌にするタイプのミュージカルだし、舞台であれば成立する展開も、映像だと陳腐に見えちゃう部分が否めないけれど、その違和感を出来るだけ取り除いて舞台版のエモーションをそのまま移植する努力が垣間見えるのが熱くなる。舞台版とセットで観てこその作品だと思うので、ぜひとも…と思う次第
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