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パラサイト 半地下の家族のkrhのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
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思った以上にエンタメ色が強く、なおかつ絶えず展開し続けるので、見飽きることなくすっかり没入。言動やアイテムがどれをとってもポップなほど印象的で、それでいてそこに込められた示唆はやたらと深い。どのカットを取り出しても思い出せるし「語れる」。経済格差のテーマも加味してさらに深堀りできる。象徴的なのは水と高低差の描写だけれども、「時計回り」と「ドラッグを買って」の二言からも人物像や格差についてめっちゃ語れる。
その「語れる」ことこそ大きな反響の一因なのだろうと思う。

その描写マシンガンの中で決定打になるのが、画面から伝わることのないニオイとは。でもみんな想像したと思う。ニオイの頓着は社会的な能力が高くないとできないし、そこを指摘されて初めて恥や立場を自覚し、憎しみを募らせるのは、まさしく弱者ならではという感じで、本当にツボをついた描写だなと思う。

能力を生かして堂々と金を巻き上げるつもりが、結局豪邸のネズミに甘んじるほかなくなり、最終的には地下から身動きできずに「上」で生きている人間のおこぼれをもらう、本当の意味でのネズミになってしまった。自業自得だが、根本的には誰も悪くない。清貧も聖人も存在しないが、真の悪人もいない。
貧困の難しさって、全体の問題のはずなのに責任が個人に帰結してしまうとこだよな、と毎度のことながら思う次第でした。つらい
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