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父の祈りをのいのネタバレレビュー・内容・結末

父の祈りを(1993年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

壮絶。

『リチャード・ジュエル』を観た時にぐるぐるしていた思考がなぜこの作品にはなかったのか。単にジェリーの勝利にカタルシスを覚えただけだったのでは、と思うと少し怖い。でも、実際はそうではないと思う。

ひとつには、この作品で描かれる時間が長いことが挙げられる。この作品を観る我々は、ジェリーが若さを謳歌する姿から、法廷や刑務所で虐げられる姿、ひいては自分の勝利に構うことなく父親の無実を晴らそうと奮起する姿まで、ジェリーと同じだけの長い時間を体験することになる。したがって、法廷で勝ち取る「無罪」がより重層的な意味を持つ。

あるいは、この作品が単なる法廷物でないことも挙げられるだろう。政府や警察組織の歪みという大きな視点と、父と子の関係の歪みという小さな視点、その双方が丁寧に描かれる。ジェリーとジュゼッペのやり取りは印象深いものが多い。子だから無条件に信じ、父だから無条件に愛することの説得力を持たせる工夫が細かいエピソードに至るまで行き届いている。

・7歳の野球大会の話を持ち出すこと
・手を握らなかったこと 父のわがままを聞いてあげられなかったこと
・エンドロールの「刑事3人は無罪」のテロップに衝撃を受けた。そういえば『リチャード・ジュエル』でも検事側が最後まで折れなかったのが印象的だったな。
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