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ルシアンの青春の一人旅のレビュー・感想・評価

ルシアンの青春(1973年製作の映画)
4.0
ルイ・マル監督作。

二次大戦末期のフランス西部を舞台に、青年ルシアンと娘フランスの出会いとその後を描いた青春映画。
ルシアンが見せる表情は冒頭からどこか物憂げで、貴重な青春時代を謳歌する若者という印象からはほど遠い。病院で働くルシアンが久々に実家に戻った際も、見知らぬ一家が居候していたり母親が浮気していたりとルシアンが落ち着ける場所は存在しない。そうした経緯もありルシアンはドイツ警察で働くことになるが、同時にユダヤ人娘フランスと恋に落ちてしまうのだ。ドイツの手先となったルシアンは売国奴であり、フランス人としての誇りを完全に売り払っている。警察に捕らえられた対独レジスタンスの指導者をじっと見つめるルシアンの姿が哀しく印象的だった。
娘フランスとの出会いは戦争と孤独に奪われた青春を取り戻すためのきっかけとなり、同時にルシアンのフランス人としての魂を取り戻すための唯一の希望でもある。
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