あまのうずめ

ドッグヴィルのあまのうずめのレビュー・感想・評価

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
3.9
合衆国のロッキー山脈にある町ドッグヴィル。物書きのトムは銃声を聞き見回すとグレースがいて逃れて来たのだと言う。トムは廃坑にグレースを隠してから町民集会を開き2週間の猶予期間をおいた上で受け入れるかを決めることで納得させる。町民は猶予期間は見返りに働くこととし、グレースは条件をのむ。


▶︎ラース・フォン・トリアー監督の「機会の土地アメリカ三部作」の1作目。カンヌで賛否の嵐だったのも納得出来た。時系列でトリアー作品を鑑賞してきて7作目となり、より深くその手中に嵌って来た感がある。

白線で町の地図が描かれ、その中に少しの家具等があるだけのセットで繰り広げられる斬新な空間で撮影されている。9章とプロローグからなり、善良で正直な人々と形容された町民が "グレース=恵み” と言う名の逃亡者を受け入れてから、それぞれが変容して行く様の対比が面白い。

ラストにスッキリしてしまうワタシは傲慢なのかと問われてしまい、このモヤモヤ感こそトリアーの狙いで、逃亡者を受け入れたもののその代償を求めた町民をアメリカ社会になろざえたデンマーク人たるトリアーの視点を見せられた。良くも悪くもトリアー節なのだ。

残酷な描写は過去作からずっと続き、続編となる『マンダレイ』の鑑賞を前に重苦しい気分と期待感が膨らんだ。