工藤蘭丸

ドッグヴィルの工藤蘭丸のレビュー・感想・評価

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
4.2
ラース・フォン・トリアーの7作目、2003年の作品。ここからはアメリカ三部作ということになるんだけど、どうやら2作目の『マンダレイ』が興行的に失敗したらしく、3作目の『ワシントン』の製作は無期限延期になってしまったようですね。ヨーロッパ三部作も黄金の心三部作も、経験を重ねた3作目が最も完成度が高かったので、未完に終わってしまったのは残念です。

本作も実験的な作品で、白いチョークで区画や場所の説明の文字や犬の絵などを描き、限られた家具を置いただけの、舞台劇のようなセットでの撮影。スタジオにミニチュアの村を拵えたようなイメージなんだけど、壁も天井もなく、ドアを開ける仕草の演技に効果音を入れて、家への出入りを表すという演出でした。また、小説のような情景描写や心理描写をナレーションで行うというのも特徴的でしたね。

初めのうちは、なかなかそのスタイルに慣れなくて違和感を感じていたんだけど、そのうち段々話に引き込まれて、それも気にならなくなって来た。そうなってからは3時間近い上映時間もあっという間に感じられて、こういう演出もありかなと思わされました。

ストーリーは、人間の持つ二面性を表現した寓話的なものではあるんだけど、やはり山奥の閉鎖的な村にニコール・キッドマンのような美女が現れると、男どもは本性を隠せなくなるし、それにつれて女たちの嫉妬心が高まっていくのも自然なんだろうなあと思いました。

ニコール・キッドマン以外の出演者は全然目に入らなかったんだけど、エンドクレジットを見たら、私が高校生の時に観た『オリエント急行殺人事件』のローレン・バコールとか、『シンデレラ・リバティ』のジェームズ・カーンとか、『叫びとささやき』のハリエット・アンデルセンとか、懐かしい名前が多々見られましたね。どこに出ていたのかを確かめるために、もう一度観てみたいとも思っています。