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ドッグヴィルの93n35i5のレビュー・感想・評価

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
4.3
田舎の人間の集団性と結束性、異分子を受け付けまいとする排除的感情、それらは決して善悪という単純な二元論で定義出来るものではないが、そこにいる人々は確実にただ"善"としている。自分達独自の善がある。故に、異分子を受け入れようとする事は今迄とは違う善(価値観)を受け入れるという事でもあり、その状況の変化による静かな戸惑い、それがとても上手く描かれていたと思う。自らの中から無理矢理善意を生もうとする人々、そんな仮初めの善意に本当の善意を向けようとする客人、その交わり切らない部分の描写が巧みであった。
行使される統治的行為も狭いコミュニティでは惨たらしを増すほど善となる。客人は一方的な悪辣たる、しかし"飽くまでも善意"の恩恵に浸かるしかない。ある意味そんなストックホルム症候群となる様子も展開に面白みを与えていた。
また作中何度も語られた「傲慢」という言葉が示唆するように、それぞれの心理的傲りによって齎された結末が哀れながらも当然といえば当然であり虚無を漂わせる。パパの説く「許す事による傲慢さ」はとても考えさせられた。許す事は自分を一段上に置き相手を見下している事にもなる。
何はともあれ善意から進化した悪意は一層タチが悪い。

建物などの基本的なセットが無く、位置や境界線を白いラインで描いているだけという斬新さも良かった。寂寞感に拍車をかける。
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