おてつ

ドッグヴィルのおてつのネタバレレビュー・内容・結末

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

床に白いチョークで囲われ、その場所の説明だけを記した舞台のようなセッティングが特徴的な映画。


物語の始まり、ドッグヴィルという村に住むトムは遠くで銃声を聞く。するととある女性がその村に迷い込んでくる。彼女の名前はグレース。グレースはギャングの手から逃げてきたと言う。トムは咄嗟に村奥の炭坑に潜むようにグレースに指示する。その直後、ギャングが村に入る。彼らは「ある女性を探していて、この村に来なかったか?」とトムに尋ねるが彼は気を利かせ「誰も来てない」という。そうするとギャング達は連絡先が書いてある名刺をトムに渡し去っていった。トムは村の道徳心を向上させようとグレースをこの村で匿うという決心をする。そんな中、住人は身も知らないグレースに疑いを抱く。その懐疑を消し去ろうとトムはグレースに対し、村人全員に対して“必要ではないけどやってもらったら助かる仕事”を奉仕して、村人全員からこの村に残っていいという承認を得ようという提案をする。しかし、村人全員から承認がもらえないと追放という条件付きだ。


トムの提案によりグレースは盲目のジャックが寂しがらない様に話し相手になったり傲慢なチャックとおせっかいババアのヴェラのうざったい子供の世話、ジンジャーの村唯一の店の手伝いなどをすることに。


そして二週間の手伝い期間が終わり、追放会議へ。一人が賛成する毎に村にある鐘を毎回鳴らしてくれとグレースは言って炭坑でまつ。ジャックは明らかにグレースを歓迎しているムードでは無かったのだが何故か鐘は15回(村人全員)鳴るのだ(個人的にここの段階でドッグヴィルは狂気の歯をむいていたのだとおもう)。こうしてグレースは村の一員となるのだ。


ドッグヴィルでいつも通り、奉仕活動をしていた時、滅多にやってこない警察が村にやってきて看板にある紙を貼り出す。それはグレースの行方不明届だった。そこで一部のめんどくさい村人がグレースをこのまま村に居させて良いのか?と喚く。しかしこの段階ではグレースは居ても大丈夫という結論に至る。


グレースは必死に働いた。その結果村人達はグレースに住む小屋を与える。そんな時、トムはだんだんとグレースに対して恋心を寄せる様になる。


そして大きな転機がやってきたのは7月4日の村の独立記念日だった。その日も警察がやってきて掲示板に紙を貼り出す。その内容はグレースの指名手配書で銀行強盗に関係があり危険な人物とかかれたものだった。その紙に村人はひどく動揺したがいままで村に対してやってくれていた奉仕によりグレースがそんな人じゃ無いと思い込みまたしても追放は免れる。


だが、トムはこの状況をみて今まで以上に多くの仕事を今までよりも少ない賃金でやって欲しいとグレースに懇願する。グレースも匿ってもらいたいし、この村や村の人々が好きだったのでその願いを承認する。


最初はグレースが率先して多くの仕事をしたが、そのうちちょっとしたミスが目立つようになり仕事に対して強制的なものに変化していく。そこにグレースは不快感を持つもののなんとかやり遂げていった。


そして物語は尋常じゃ無いほど大きな転機を迎える事になる。ヴェラとチャックの子供の一人(先程のうざったい子供)のジェイソンを世話している時、彼が「尻をたたいてくれ」とグレースにお願いする。グレースは最初は断っていたが、あまりにもしつこいためグレースは渋々、ジェイソンの尻を甘叩きするのだった。その時ちょうど、また警官が村にやってくる。ドッグヴィルの住人がグレースの手がかりとなる帽子を見つけたと警官に話していたそうだ。その間にチャックが家に帰ってきて、なぜかグレースを脅迫し、セックスさせてもらわないと警官にお前の存在をバラすというばかりにグレースを強姦するのだ(まじ最悪👎)。その結果、またしても警官の手からグレースはのがれることができた。


トムはグレースに対して村から脱出するように提案する。そこに激怒NOWのヴェラがグレースの小屋にやってくる(なんとなく察するよね)。ヴェラは息子のジェイソンの尻をたたいたこと、夫のチャックに対して無理にセックスを強要したとありもしないことを言われ、結果的に大切に集めていた7体の人形を壊される(その時、「涙を堪えることができたら壊さない」とヴェラに言われるのだが結果泣いてしまい、7体全て壊される)。


グレースは村から出ていくことを決意。輸送業を営むベンに賄賂を渡し、取引物のリンゴと一緒にグレースも乗せるという契約を結ぶ。しかし道中、ベンは危険人物を運ぶには追加料金が必要だと迫る。グレースにはもうお金がない…そこでベンはグレースを強姦し、追加料金は支払いしなくて良いとした。グレースは疲れ果て深い眠りにつく………眠りから覚めると犬の鳴き声がしたのだった(嫌な予感)。ベンに裏切られ、ドッグヴィルに戻されていたのだった。もう最悪ですよ、村人は血相変えてグレースに対して牙を向けるのだから…


グレースがベンに渡した金は実はトムが父から盗んだものだったのだ。しかしトムはグレースが盗んだと証言したために事態はさらに悪化することになる。グレースは村から逃げられないように鈴のついた首輪をつけられてしまう、まるでグレースが犬のように。その首輪は余りにも重たく自分の思う通りには動けなかった。しかしいつものように労働を迫られ、唯一の休息時間は村人に強姦されることになる。この時点で男の村人はトム以外全員がグレースとセックスしていた…


トムの努力によりグレースにも村の集会での発言権を得ることに。そこで、いままで受けてきたさまざまな虐待や仕打ちを述べるが村人は全く信じずにグレースを追放しようとするのだった。トムはグレースをなだめようとする。しかしそこでトムの嫌らしい感情が全開に出て一方的なセックスをする。ここの段階でグレースはトムも村人と一緒で、クズな野郎だと感じるのだった。トムはそのあと集会に戻り、グレースに告げることなくギャングからもらっていた名刺に記載してある連絡先にグレースにの存在を伝達し、村人の合意によりグレースの小屋に鍵をかけた。


ギャングがとうとうドッグヴィルへ。トム率いる村人達は丁重にギャング達を向かい入れるがそこで衝撃の事実が判明する。グレースはギャングのボスの娘で汚い仕事を継ぐのが嫌で逃げてきたのだというのだ。ボスはグレースに対して「他人が自分と同等の道徳水準はない」とつげグレースに対して行動を起こさないのは傲慢だという。そんなことはできないと判断し一旦、村全体を見てみるとそこには救いようもない村人の様子や表情があった。そしてグレースは決断する。彼女はボスに村を消し去るように命じるのだった。特にヴェラに対しては子供を先に殺していきその時「涙を堪えたら子供を殺すのをやめる」と言えと命じる(まあ、堪えられるわけもなく子供全員殺されてしまう、しかも赤ちゃんまでね…ここが胸糞悪い)。ムラは焼き尽くされてトムだけ残る、そしてトムはグレース自身の手で殺される…
the end…


ギャングは一般的に悪とされるけど、この映画では陰湿且つ凶悪な行為をしていたドッグヴィルの村人が“本当の悪”とされ最終的にギャングが“正義”となり村人に鉄槌を下す様は異様なカタルシスを味わえてとても爽快でした。


ドッグヴィルは他の街や村とほぼ交流がない。そういう閉鎖的なコミュニティ独自の文化だったりあらゆる欲が生まれる。貧富の差による村人のグレースへの嫉妬心だったり男のセックスへの異常なまでの好奇心はそれによるものなのかなと思う。


とても長い作品だけど見応え抜群で最高に面白い映画だと思うのでみて欲しいです!
おてつ

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