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ドッグヴィルのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
4.0
ラース・フォン・トリアー監督・脚本による「アメリカ合衆国 - 機会の土地」三部作の第1作目。
広い殺風景なスタジオの床に、チョークによる白線で町の地図や家の間取り図を描き込んだ舞台セットを背景に全編を撮影。
主役にニコール・キッドマンを起用。
主題歌は、デヴィッド・ボウイの「ヤング・アメリカン」
R-15指定版
原題:Dogville  (2003、2時間58分)

~登場人物~
(ヒロイン)
・グレース(ニコール・キッドマン)

(ドッグヴィルの住人)
・トム・エディソン(ポール・ベタニー):作家となって人々にすばらしい道徳を伝えよう願う。定期的に町の住民を集めて会合を開き、住民の道徳向上に努めている。
・トムの父、トム・エディソン・シニア(フィリップ・ベイカー・ホール):医者
・リズ(クロエ・セヴィニー):町の男たちの視線の対象。
・ジンジャー(ローレン・バコール):食料品店を営む。
・チャック(ステラン・スカルスガルド)果樹園を営む。
・チャックの妻ヴェラ(パトリシア・クラークソン):子どもが7人。
・子どもの一人、ジェイソン(マイルズ・プーリントン):悪ガキ。グレースに尻を叩くよう強要する。
・トラック運転手、ビル(ジェレミー・デイヴィス)
・ジャック(ベン・ギャザラ):過去に見たもののの話しかしない。実は◯◯
・ビル・ヘンソン(ジェレミー・デイビス):ガラスを磨いて宝石に見せかけて売っている。
・ビルの妻(ブレア・ブラウン)
・黒人のオリヴィア(クリオ・キング)
・オリヴィアの娘で、体に障がいを持つジューン(シャウナ・シム)
・マーサ(シオバン・ファロン):伝道所の女性
・ベン(ジェリコ・イヴァネク)
・トム(フィリップ・ベイカー・ホール)

(ギャング)
・ギャングのボス、ビッグ・マン(ジェームズ・カーン)
・ギャングの手下、コートを着た男(ウド・キア)
・ギャングの手下、大きな帽子をかぶった男(化ジャン=マルク・バール)

・ナレーション(ジョン・ハート)

~物語はプロローグと9つの章で構成されている~
・プロローグ 町とそこに住む人々の紹介
Which introduces us to the town and residents
・第1章 トムが銃声を聞き、グレースと出会うIn which Tom hears gunfire and meats Grace
・第2章 グレースはトムの計画に従い、肉体労働をするIn which Grace follows Tom's plan and embarks upon physical labour
・第3章 グレースは挑発的な試みに喜びを見いだすIn which Grace indulges in a shady peace of provocation
・第4章 "ドッグヴィルの幸せな日々"
"Happy times in Dogville"
・第5章 "とにかく、独立記念日"
"Fourth ofJuly after all"
・第6章ドッグヴィルが牙をむく
In which Dogville bares it's teeth
・第7章 グレースはドッグヴィルを去り、再び新しい日を迎える
In which Grace finally gets enough of Dogville,leaves the town,and again sees the light of day
・第8章 集会で真実が語られ、トムが退席する(だが、後で戻る)
In which there is a meeting where the truth is told and Tom leaves lonely to return(after)
・9章と終幕 ドッグヴィルに待ち望んだ来訪者たちが現れ、映画は終わる
In which Dogville receives the long-awaited visit and the film ends

舞台は、大恐慌時代のロッキー山脈麓にある廃れた炭鉱の町ドッグヴィル(意味:犬の町)。
そこにギャングに追われたグレースが逃げ込んでくる。
町の人々の道徳の向上を目指す医者の息子トムは、各家で一時間働くことを条件にグレースを匿うことを町のみんなに提案する。
肉体労働をしたことがなくアラバスターのような手を持つグレースだが、なんとか受け入れてもらおうと努力し、2週間後、投票により居住が認められる。
しかし、警察やギャングがその後もやってきて、町の人々のグレースに対する態度にも変化が現れる…。

~気になるシーンから~
・ギャングの名刺
・してもよいとは思うけど、特にすることもないこと
・捜索手配書
・ウソの指名手配書
・1日2回2時間の労働
・恐喝とレイプ
・7体の陶器人形
・禁欲主義
・割増料金
・お金の盗難
・鈴のついた首輪と重い金属のホイール
・トムも同類
・グレースの傲慢
・グレースの決断
・犬のモーゼス

トムはドッグヴィルの町の道徳的・精神的な指導者のような存在で、グレースには彼が保護者であり愛の対象のようにも見えた。
ところが、ドッグヴィルの獣のような本性が美しいグレースに恐ろしい牙を向いたことで、実はトムが独善的かつ偽善的な人間で本性は他の住民と同じだと分かる。
道徳教育者の敗北と悪の勝利は、ドッグヴィルへの裁きという衝撃的で恐ろしい結末をもたらす。
この作品は、トリアー監督が限られた舞台空間に俳優を閉じ込め、チャンスの国と言われたアメリカ合衆国の闇を暴く形をとって 人間の本性に深く切り込んだ怖い映画である。
「メイキング・オブ・ドッグヴィル」を観れば、俳優たちが演技に戸惑い追い詰められていく様子がわかる。
続編である「マンダレイ」にニコール・キッドマンが出なかったのは鑑賞する立場としては残念だが…。
それにしても、この頃のニコール・キッドマンは、女優としてのピークを迎え、1999年の「アイズ ワイド シャット」や本作など、本当に美しく魅力的だった。
なお、ラース・フォン・トリアー監督作品では「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と本作が私のお気に入り。
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