Sari

ストレンジャー・ザン・パラダイスのSariのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

2021/11/10 DVD

ジム・ジャームッシュ監督長編第二作。
先日のケリー・ライカート監督特集では『リバー・オブ・グラス』(1994)と比較されたり、また終幕したばかりのジャームッシュ・レトロスペクティヴにて、一挙公開され再び話題となった代表作。

1984年製作、公開当時ミニ・シアターブームの先駆け的存在として、若者の熱狂的なフリークを産んだ伝説的インディーズ映画。

ニューヨークでチンピラのような生活を送るウィリーのもとに、クリーブランドに住む叔母からの電話で、ブタペストからやってくる従妹の少女エヴァを、10日間ほど預かってほしいと頼まれる。

オフ・ビートな人間模様を独特のユーモアを交え、「新世界」「一年後」「パラダイス」の三章で綴る、ワンシーン・ワンカット撮影のモノクローム作品。
個人的にゴダールの『勝手にしやがれ』を初めて観た時の鮮烈な感覚を思い出す、そのセンスに脱帽した作品。
部屋でDVDを流しっ放しにしておきたくなるスタイリッシュさ。ジャームッシュ監督作品で、断トツに好きな作品となった。

出演俳優は、ジャームッシュの知人を起用することが第一条件であるという。
ウィリー役はサックスプレーヤーのジョン・ルーリー、エディ役は俳優・元ドラマーのリチャード・エドソン、エヴァ役はハンガリー出身の女優エスター・バリント。

実はハンガリー出身という設定のウィリー、エヴァと叔母が時々話すハンガリー語がストレンジャー(異邦人)という、アメリカ映画ながら、どこか東欧的要素を称えている。

好きなシーン(ポイント)は、
ウィリーがTVディナーと呼ぶアルミホイルに包まれたファストフード(機内食のような)のステーキ肉。
汚い部屋に掃除機をかける時は、〝ワニを窒息させる〟と呼ぶ。
イカサマで得た金でクリーブランドに住む叔母とエヴァの家まで車でやって来たウィリーとエディが、エヴァの同僚ビリーと4人並んで劇場で観ている謎のカンフー映画。
辺り一面雪景色のエリー湖を見つめる三人。
エヴァを連れてマイアミまで来た二人がドッグレースで金をすってしまい、バカンスとはいえない安モーテルで過ごす羽目になる。
ビーチをひとり彷徨うエヴァが土産物屋で買った大きなストローハットが目印となり、麻薬の引き渡し人に間違われ大金を手にするなど…落ちまで全てが最高。

エヴァが魅力的で、無造作な髪型、黒のロングトレンチコートというシンプルでマニッシュな装い、ウィリーが街で買ってきた〝冴えない〟花柄ワンピースの重ね着、履き古したコンバースなど、全てが格好いい。
彼女がカセットで流すJホーキンスの格好良さ、劇中で時折挿入される弦楽器の音色が詩的でとても好きだった。




2021-318
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