このレビューはネタバレを含みます
ネバダ州で美容室を営む矢島一家。
ある日、一家の大黒柱である父の矢島徳次郎が置き手紙を残して家出してしまう。
徳次郎が財産の殆どを持っていってしまったため、路頭に迷う妻のナオミ、長女マーガレット、次女ストロベリー。
ナオミは一時は自殺まで考えるも、生活のためストリップダンサーに復帰する。
その陰で芸能界を志すマーガレットは買えないドレスを盗み、多感な時期のストロベリー(11歳)は家族のため貯金箱のお金を元手にカジノでスロットに興じる。
娘2人が捕まり留置所にやってきたナオミだったが、警察官から屈辱的な言葉を浴びせられ暴力をふるい、結局3人共留置所に入ることに。
途方に暮れていた3人だったが、DJ OZMAら日本人に声をかけられ、ネバダ州を出て舞台に立ち、歌と踊りを披露しながら日本へ徳次郎を探しに行く事を決意するのだった。
2008年に『みなさんのおかげでした』番組企画ユニットとしてスタートした、矢島美容室プロジェクトの集大成。
元はDJ OZMAに見出されたネバダからきた家族、失踪中の徳次郎を探すため、見つけてもらいやすいユニット名で活動しているという設定のみだったため、その設定を深掘りして肉付け、来日するまでを映画仕立てにしたのが本作である。ストーリーは後から膨らませた後付けなので、賛否あるとは思うのだがとんねるずや矢島美容室ワールドが好きな人には楽しめる作品だと思う。
とんねるずが創り上げてきた『みなさんのおかげです』『みなさんのおかげでした』ワールド全開のおふざけは、今の時代、差別的で低俗な笑いの烙印を押されがちだが、個人的にはエンタメとして評価の高い作品だった。
確かにとんねるずは空気を読まない暴走、セクハラ、ポリコレ満載の悪ふざけが常だが、お笑い芸人が音楽CDをリリースする、番組企画のCDを出す、スタッフを主要メンバーとして番組に登場させる、という点で先駆けとなった存在で、常に真剣にバラエティ作品と向き合っていた。
エンディングでフジの偉い人も言っているが、枠を飛び越えて「バラエティ番組が映画を作ったっていいじゃないか」というおもしろ、なんでもやってやろうという気概が当時のテレビ業界を盛り上げてもいた。
この作品にしても随所にしっかり拘りを感じた。真剣に作り込まれた劇中歌、これだけの音楽を用意できる邦画はそうそうない。
織り交ぜられたセルフパロディ、『みなさんの〜』時代から関わりがある豪華なキャストをふんだんに使えるのは、彼らが長年にわたり築いてきた礎あってこそ。
本作の出演者はとにかく豪華。松田聖子は番組の常連であったし、当時人気が高かった黒木メイサやKABAちゃんも出ている。黒木メイサはビジュアルもさることながら演技もうまくて、ラズベリーの役どころにぴったり。
チビノリダーだった伊藤くんの起用や、ストロベリーの野球シーンなど、セルフパロディ要素も満載。知っててみるとニヤリとできます。
最後の最後に宮沢りえと本木雅弘。まさかの伊右衛門コンビ。(しかも徳次郎はもっくんだったんかい)
このキャストの豪華さはテレビ局制作ならではですよ。今これだけの人集められないでしょう。
上手いのは来日後の映像として実際のコンサートシーンを挿入していること。
a-nationのステージカットなども入っていて、当時ステージをみたファンにも嬉しいですよね。(私は見てないんだけども)
エンディングではメイキング映像、最後にはおきまりのフジの偉い人の挨拶とか。
お高く止まらず、バラエティです!と堂々と乗り込んできた感じがして私は好きでした。
超おすすめかって言ったらアレだけど。バラエティの延長として楽しみました。
とんねるずの武道館公演が11月に迫る中、観られたのはちょうど良い機会だったなと思います。
ずっと観てると、マーガレットが超可愛い気がしてくるから不思議。