ジョンマルコビッチ総統

欲望の翼のジョンマルコビッチ総統のレビュー・感想・評価

欲望の翼(1990年製作の映画)
4.3
ティンパンなラテンのリズムに乗せて熱帯の森のなかに現れる「欲望の翼(邦題)」のタイトル映像が象徴するような、気怠げで甘く美しい青年ヨディ。
金や容姿に恵まれながらも、刹那的な肉欲に溺れ破滅的な生き方をするヨディと、彼を愛してしまい苦しむ女たち、そして彼女たちを愛した男たちの人間模様を描いた物語。

ヨディは、本当にどうしようもないダメな男なのになぜこうも人々を惹きつけるのか。
やはりヨディを演じたレスリー・チャンが放つ魔力のせいだろうか。
あの憂いを帯びた、瞬きしたら消えてしまいそうな儚さと悪魔的な雰囲気の相反する二つの魅力を併せ持つレスリーは、本当に稀有な役者だと再確認した。
観ているこちらもヨディの魅力に取り憑かれてしまうようだ。

彼を愛するカリーナとマギーの二人の女性たちは、レトロなファッションも不毛な恋に苦しむさまもとても艶やかで美しく、そしてどうしようもなく哀れで魅力的。

アンディとジャッキー演じる二人の青年が本当にいい奴なのが救われる。

全編にわたり南国っぽく物憂げな雰囲気に包まれ、余韻の残るラストもとても良かった。
気に入りました。

茹だるような晩夏の午後なんかに、扇風機の温い風を頼りにまた観たい一作。