風来坊

凍える牙の風来坊のレビュー・感想・評価

凍える牙(2012年製作の映画)
3.5
過去レビュー投稿。

原作は第115回直木賞受賞作の乃南アサさんの日本の小説を韓国で映画化したサスペンス映画「凍える牙」です。

ある夜、ソウルで車の中の男が突如、発火して死亡すると云う奇怪な事件が発生する。しかし、その事件は始まりに過ぎなかった…。
事件を担当する事になった、一向に出世出来ずにひねくれた中年刑事のサンギルと巡査上がりの新人女性刑事のウニョンが奇怪な事件に挑む。韓国製のサスペンス映画。

日本でもNHKのテレビドラマで木村佳乃さん主演で、実写化された事のある本作。次は映画化かなと思いきや進展せず、とうとう韓国映画に先を越されてしまいました。

原作は既読。主人公の女性刑事の音道刑事の韓国版でのキャラクターには不満がありますが、かなり原作の雰囲気を表現出来ているなと感じました。
孤独な女性刑事が人を殺すために育てられた悲しい狼犬と心を通わせる場面は、原作でも肝の部分ですが丁寧に表現されていました。

その反面、ひねくれた中年刑事との絆を深める表現は中途半端な感じがしました…。もっと二人がなぜ今の境遇なのか、背景を丁寧に描いて欲しかったですね…。

狼犬はあのつぶらで悲しげな瞳が非常に良かった!
自らが背負った悲しい宿命を見事に表現されてました。狼犬の悲しい運命には泣けてしまう。

さらに中年刑事役のソン・ガンホさんもひねくれた刑事を熱演してます。
段々と女性刑事に心が氷解して行く感じが上手かったです。
前述したように中年刑事と女刑事が打ち解ける材料が少ない中で自然に見せてくれるのはさすが名優といったところ。
ソン・ガンホさんが出演してなかったら、大分違う物になっていたかも知れません。

女刑事役のイ・ナヨンさんも難しい役を好演してましたね。
雰囲気をが何となく日本の女優の戸田恵梨香さんに似てました。
でも…ライダースーツがあんまり似合っていませんでした…。
個人的にはこの役は少し男っぽい感じの女優さんの方が似合うのかなと思いました。

気になったのは上司が調子が良すぎ、褒めたり貶したりでイライラします…。もう覚えていないのですが、原作はもっと人情味のある上司だったような?

全体的に駆け足な感じはしますが、原作の味を上手く出せています。
異国の原作をここまで形にする辺りは、韓国映画の力をまざまざと見た気がします。
風来坊

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