穂苅太郎

11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たちの穂苅太郎のレビュー・感想・評価

3.6
徹底的な無常観と人生の無意味と虚しさを描く。
もちろん美化もしていないが、揶揄もしていない。しいて言えば時代を丸ごと糾弾、もしくは嘲笑している。
ドキュメンタリータッチの演出がとても面白い学生運動と三島の公開討論で顕著だ。
あえてドラマチックにすることも本来の若松監督ならグロテスクに狙ったはずの自決シーンすらあっさりと過ぎていく。
桜が繰り返し使われるのは日本は何も変わらないことの隠喩であり、ただひたすらに人間存在の無意味と無常を淡々と描くことで最大限の強調に仕上げている。
「止められるか俺たちを」での破天荒の裏にさすがの知性と理性があったことを認めたい。
惜しむらくは井浦新がその若松の演出を受けたあまり三島が時代の徒花として内包しているはずの狂気表現が今一つ伝わらなかった点。生来のやさしさのほうが上回ってしまった。
穂苅太郎

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