半兵衛

月の輝く夜にの半兵衛のレビュー・感想・評価

月の輝く夜に(1987年製作の映画)
3.7
30代後半の女性に突如起こった結婚騒動をコミカルに描きつつも、軽薄にならないのはおっさんやおばさんの世代に当たる登場人物を通して年を重ねるにつれ比重が高まる上に行けないし希望が持てない少し行き詰まった感情を丁寧に描写しているから。特に主人公に婚約を申し込む42歳のおじさんを嘲笑えず身近にいそうな奴に感じるのは年齢が近いからか?

登場人物たちの暮らしをじっくりととらえた前半の物語はやや単調ではあったが、月の魔力に導かれるようにそれぞれが不貞の道に走りそうになり絆の崩壊の危機に陥った主人公一家が、お互いを改めて見直して再生してハッピーエンド(一人腑に落ちていないけれど)を向かえていく流れが素晴らしくて最後の〆も良いので名作を見たような気分に。

あと終盤重要な会話をしようとする一家に次々とゲストが割り込んできてしっちゃかめっちゃかな状態になる場面が家族に扮する役者たちの微妙な顔芸も合わさって腹を抱えて笑ってしまった、それでいて物語が闖入する人たちにより少しずつずれていくのになぜか大団円を迎えてしまう奇跡に感動。

それにしても本作のニコラス・ケイジは、兄の婚約者を無理やり押し倒すところやそんな彼女に本気で惚れてしまうところといい、自分の片手が無くなる原因を作った(半ば逆恨みだけれど)兄や世間を僻んでいるところといい、いつもより石原裕次郎っぽさを感じてしまった。
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