木村建太

バッファロー’66の木村建太のレビュー・感想・評価

バッファロー’66(1998年製作の映画)
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倫理的な欠落が大きな魅力となる作品。
男の行動は完全に間違っているし、女のリアクションも佇まいもどこか間違っている。正しくない。その正しくなさが魅力。

心に傷を負った男がまず間違いを犯す。そして間違いを犯した結果なぜか幸福を手に入れる。
その後は幸福に慣れない男と降って湧いた幸福とのひとりずもう。だが実にふにゃっと幸福に負ける。
全体的にふにゃっとした映画だ。だめな人間が、ふにゃふにゃとなんとなく幸福を得る。このなんとなく、がよい。

間違い(というか明らかな犯罪)を犯した結果幸福になるなんて、よくない映画かもしれない。じっさい常識的に考えれば現実で真似をしてはいけない行動に満ちた映画なのだが、こんな物語が地球上のどこにも存在していない(存在したことがない)と考えると、さみしい。というか、存在していないわけがないだろう、と思う。恋愛も人生もなにかの間違いのように降って湧いたものなのだから。
木村建太

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