ジュリアン

バッファロー’66のジュリアンのレビュー・感想・評価

バッファロー’66(1998年製作の映画)
5.0
あまりに惨めでダサすぎる男と行きずりでその間抜けさに付き合って存分に甘やかす女の変な映画。この醜い男をイノセントな存在として全肯定するヒロインの様子は今時のサブカルっぽい。幼い顔なのも合間ってピグマリオンに拍車がかかってる。だけど、それがめっちゃ良い。

話が進むにつれて家庭環境が最悪だった回想シーンや父親との反復性を感じさせる怒鳴り方が露呈したり、初恋の相手の名前を名乗らせていたことが明かになる苦い展開ばかり。

終始、男は見栄を張るし、1人じゃないと自身をさらけ出せないし、経済的にも社会関係的にも色々と不幸な身の上なのだが、映画の結末も優柔不断な男を物語る終わり方で良い。

スポーツ賭博で選手がイカサマをしたという陰謀じみた妄想を拗らせて破滅に向かうとは思いきや寸前で怖気付いてやめるし、友人のロッキーに憂さ晴らしする始末。でも、その代わり彼女の愛を受け入れて愛する決心がついたのか陽気になって終わるという明るい映画。ハグすらできず握手だったのに最高じゃんという。

男らしさの虚構性や弱者男性、成熟と喪失など色んなキーワードで語ることができる今日的な内容でおもしろい。冒頭で醜い男とは述べたものの、割と愛すべきマヌケという具合で終始貫ぬかれていたのは良かった。女に威張る割に尊厳がない場面が多すぎるから。