都部

千年女優の都部のレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
4.2
今敏が得意とする現実と虚構の融和の面目躍如とも言うべき作品で、様々な時代映画の主役を演じた千代子の半生を役柄の移り変わりとしてシームレスに継続する映像として成立させることで、未曾有にして無二の映像的快楽を生み出す事に成功している。

アニメーションの映像技法的な目覚ましさも散見されるが、少女時代に恋をした一人の男を追って縦横無尽に女優として物語を駆け回る千代子の姿は酷く魅力的な存在として映り、作中作の女優であることを思わず忘れさせるような迫真の熱演が観客を物語へと引きずり込んでいく。

この話の特徴的な部分としてある回想の中に介在する撮影陣のリアル/ロマンが同居した第三者の視点が観客と一体になり、物語の進行に併せて観客の心持ちを操作する配置なんかなかなかテクニカルだ。作中で自覚的に時系列の接合性の違和を語ることで、観客はそれに対する意識を作中人物に委ねて、このめくるめく虚構と現実の融和に耽溺することが出来るのだろう。

物語の帰結として用意される結末は浪漫に溢れた物語に現実的だが魅力的な解釈を与えるものとなっており、制作会社の社長の献身的な愛のある意味で対極に位置する普遍的な自己愛が〆文句として飾られる鮮やかさたるや賞賛の一言である。洗練された画面の構図や平沢進による劇伴が本作が観客に与えるトリップ感を補強しており、作中の構成要素の足並み揃い踏みな面構えが、本作を名作の域へと引き上げている。
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